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冬の青春18きっぷの旅 ~久留里線物語~ 序章『旅立ち』

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 想いはきっと叶えられる。
 しかしそれによって失う大切なものもある…。

ある日僕はTwitterで「久留里線行きたいなぁ」とつぶやいた。
この時、まさか本当に自分が久留里線に行く事になろうとは夢にも思っていなかった…。


これは僕が千葉県を走るJRのローカル路線、久留里線へたどり着くまでの壮絶な物語である。

物語は僕がふと目にしたあるニュースから始まる。そのニュースとは、

「消える「国鉄色」 久留里線の車両旧型車両老朽化で引退へ」

という見出しから始まるもので、同じページに載っていた
クリーム色に赤色帯、いわゆる国鉄色のキハ30の写真に僕は釘付けとなった。

「おおお、こんな車両がまだ現役で走っていたのか!」

早速僕は久留里線について詳しく調べてみた。

 久留里線は、千葉県の木更津駅と上総亀山駅とを結ぶ32.2キロのローカル路線。
 電化されておらず、国鉄時代に製造された気動車のみが運転している。
 キハ30形、キハ37形、キハ38形の各形式は、JRでは久留里線でしか運転されておらず、
 貴重な存在となっている

久留里線のことは漫画「鉄子の旅」を熟読していたので知っていた。
しかし、この国鉄色のキハ30が走っていることは知らなかった。
そしてこのキハ30形、キハ37形、キハ38形が今年引退して、新型車両が投入されるというのだ。
さらに今年3月のダイヤ改正で久留里線の運転保安方式を変更、国鉄時代から採用してきた
「タブレット閉そく方式」をやめ、「特殊自動閉そく方式(軌道回路検知式)」に更新するという。
つまり、鉄道ファンが泣いて喜ぶ(?)タブレット交換も見れなくなってしまうのである。

無くなる前に見ておかなければ。。

当然僕の頭は久留里線のことで満たされることになった。。

久留里線に行きたい。。
でも久留里線は千葉県。この時の僕にとって千葉県はあまりにも遠い存在だった。
一応「久留里線行きたいなぁ」とヒロエさんに相談してみる。。
ヒロエさんはやはり興味ないらしく「ふーん」と全く相手にしてくれなかった。

やはり無理なのかなぁ。。

こうしてしばらく時が経って行った…

さて、今回冬の18きっぷ5回分のうち、2回分を前回のブログで紹介したように下呂温泉で使った。
残り3回分残っている訳だが、そのうちの2回分を使ってヒロエさんと
富山の氷見線(日帰り)に行く予定だった。
そして残り1回分は、次の日僕が自由に使っていいことになっていた。
なので最初、残りの1回は石川県の「のと鉄道」にでも乗ってくるか~と考えていた。
そして、色々時間など調べている時、ふと久留里線のことを思い出してしまった。

最後、久留里線行けないかな。。

そう思った瞬間、ぼくはある列車の存在を思い出した。
「ムーンライトながら」である。
そう、ここでぼくは禁断のプランを思いついてしまったのだ。。

「ムーンライトながら」に乗れば久留里線に行けるかもしれない。。
そう考えた僕は早速時刻を調べてみた。

氷見線の帰りに大垣まで行けばそのままムーンライトながらに乗れる。。
そうすれば早朝から久留里線を堪能できる。
しかし問題は帰りである。当然その日のうちに鈍行で京都まで帰るのは不可能である。
じゃ帰りもムーンライトながらにすればとも思ったが、
久留里線に行くのは1月10日で18きっぷが使える最終日。
当然10日の夜のムーンライトながらの運行は無かった。
どうしよう。。
そうだ!夜行バスという手がある!
最近の夜行バスはとにかく安いと聞いていたので、
これなら僕のお小遣いの範囲内で行けるはずだ!
11日は仕事だったが、早朝に帰ってこれるので問題ない。。
それにしても、こうして数珠つなぎにアイデアがわきあがってくる自分に驚いた。。

シナリオは完成し、久留里線行きが現実味を帯びてきた。
あとはこれが実行できるかどうかだ。
ここから3つの関門が待っている。

まずムーンライトながらは全て指定席なので、
予約して指定座席券(510円)を買わなければならない。
実は僕はまだムーンライトながらに乗ったことがなくて席の予約の仕方もよくわからない。
こういう時はネットで検索だなと調べてみると詳しく書いてあるサイトを発見。
みどりの窓口へ行くのが手っ取り早いようだが、ネットでもできるみたいなので
ネットでやってみることに。。
「JR CYBERSTATION」というサイトで空席確認ができるというので、
席が空いてるかを調べてみた。
1月9日冬の18きっぷ期間最後の運行日は奇跡的にまだ空きがあることがわかった。
そして空席があればプッシュホン予約できるという。。
ふむふむ、かなり面倒くさいけれど、みどりの窓口へ行くのも面倒くさいので
プッシュホン予約してみることに。。
時刻表で列車予約コード、乗車駅コード、降車駅コードを調べて(うーん面倒くさい!)
なんとかプッシュホン予約成功!
予約番号をもらったのでそれを持ってみどりの窓口へ行ってきっぷと交換するしくみだ。
なんだ、結局みどりの窓口へ行かないといけないんじゃないか…。。

でもなんとか第一関門クリアである。

次は夜行バスだ。。安いといってもどれくらいなんだろう。。
夜行バスもここ何年も利用してないしなぁとこれまたネットで調べてみた。
旅するのにも便利な世の中になったものである。
東京~京都間の夜行バスの最安値というものが出て来た。
この時期最安値はなんと2,800円だった。。や、安い!
ムーンライトながらとほとんど同じ値段である。。
JRのドリーム号なんて8,000円くらいしたよなぁと考えるとかなりおトクである。
4列シートということなのでたぶん寝れないだろうなぁとは思いつつ、
久留里線に行けるのであれば大した問題ではない。。
今回はVIPライナーという会社のバス。早速予約してみるとこちらも奇跡的に予約できた。

うーん、第二関門もクリア。

最後の関門はヒロエさんである。
僕の中では、最後の18きっぷの旅を「のと鉄道」から「久留里線」にしただけ。
そう考えていたので、ヒロエさんも簡単に許してくれる、そう思っていた。
問題は氷見線のあとだった。
ムーンライトながらに乗る為には22時49分までに大垣まで行かなければならない。
氷見線から一旦京都駅に帰っていたのでは間に合わない。
そこで途中の米原でヒロエさんと別れれば余裕で間に合う計算だった。
そして僕はこんな計画を立てた。

京都駅朝5時30分の始発で氷見線へ
 ↓
氷見線の始発駅高岡に11時36分着
 ↓
16時31分までゆっくり氷見線を堪能
 ↓
16時31分に高岡を出発し、20時53分に米原着
 ↓
ここでヒロエさんと別れてヒロエさんは京都に22時頃着
そして僕は大垣に21時34分に着き、ムーンライトながらに間に合う。
しかしここでちょっと問題が。。
18きっぷは2人一緒に行動してないと使えないので
ヒロエさんの米原から京都までは実費となってしまうが、1,000円ちょっとなので僕が負担すればいい。

我ながら完璧な計画だ。。

しかし、人生とは思い通りにはいかないものなのである。

自信たっぷりにこの計画をヒロエさんに伝えた所、思いがけない答えが返って来た。

「え?何それ?」

あっさり却下されてしまったのだ。

「えー?何で??」
「私もムーンライトながら乗りたいよ~」
「え~~~?じゃ、じゃあ一緒に久留里線行こうよ」
「そんなに家空けるの無理!あずき(飼い猫)どうすんの?」
「え~~~?じゃキャットシッターさんに頼めば…」
「それより何で米原から一人で帰らなあかんの??絶対イヤ!」
「え~~~?そこはもう大人なんだし…」

完全に話はこじれてしまい、ヒロエさんはすっかりスネてしまった…

ああ、やってしまった…

こうしてしばらく二人の間には険悪なムードが漂うようになる…


今思えば今回無理に久留里線に行かなくてもよかったのかもしれない。
車両の入れ替えは今年の秋頃だというし、まだ見に行くチャンスはある。
ただ、タブレット交換は3月で終わってしまい、春の18きっぷの時期では間に合わない。
やはり久留里線のタブレット交換は見ておきたかったので
無理にでも今回久留里線に行きたかったのだ。


そして出発前夜。。
やはり行く行かないで口論となり、話し合いは深夜におよび
ついに「もう、氷見線も行かない!」とヒロエさんに氷見線をもボイコットされてしまった。
時間は夜中3時。結局結論が出ないまま就寝。
といってもほとんど寝ないまま朝4時を迎え、僕はとりあえず出発の身支度をした。
ヒロエさんは起きる気配がない。氷見線ボイコットは本気のようだ。
ヒロエさんが氷見線行かないなら、僕一人で行っても面白くないので出発を躊躇する。
でも久留里線はどうしても行きたかったので、とりあえず京都駅に行き、
とりあえず5時30分の始発に乗ろうと思った。
そして行き先は乗ってから考えようと思った。
時計は朝5時。そろそろ出発しなければならない。
布団の中でヒロエさんが泣きながらぼそっとつぶやいたのを僕は聞き逃さなかった。

「氷見線楽しみにしてたのに…」

この言葉にはかなり心揺さぶられた。
僕も涙が出そうになった。
でも僕は聞こえないふりをした。
「一緒に氷見線行こう!」と口に出したかった。
でももう間に合わない。。
久留里線やっぱりやめようかなとも思った。。
でも出来なかった。
一瞬だったけどこんな葛藤が続いた。

ごめんね、ヒロエさん。
僕は行かねばならぬのだ。


かなり後ろ髪ひかれつつ出かけようとすると、家の鍵が無いのに気がついた。
無いとそれまた何となく困るので家の鍵を探す。
やはり見当たらない。
そうしているうちに15分経ち、さすがにもう出ないと始発に間に合わない。
布団に入っているヒロエさんに「ごめん、鍵が無い。鍵閉めといて!」と言って僕は家を出た。

また僕は家出するかのように家を飛び出したのであった。


つづく
by kotobanohaoto | 2012-01-21 21:30 |


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